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健診異常シリーズ⑭|腹囲男性85cm・女性90cmはメタボ?本当の意味を糖尿病専門医が解説!

[2026.08.17]

健康診断で、

「お腹まわりを測りますね」

と言われて、メジャーで腹囲を測られた経験がある方も多いと思います。

なぜ健康診断では、わざわざ腹囲を測るのでしょうか?

 

太っているか確認しているだけでしょ?

 

と思われるかもしれません。

 

実は違います。

 

健康診断で腹囲を測る大きな目的は、

 

お腹の中にたまった「内臓脂肪」を推測すること

 

です。

 

そして、この内臓脂肪は糖尿病・高血圧・脂質異常症などが連鎖していく

「メタボリックドミノ」のかなり上流に位置します。

今回は、健康診断で測定する「腹囲」について糖尿病専門医が解説します。

 

なぜ健康診断で腹囲を測るの?

腹囲は、単純に「太っている・痩せている」を判定するための検査ではありません。

本当に知りたいのは、

内臓脂肪がどのくらいたまっているか

です。

内臓脂肪をより直接的に評価する方法の一つがCTです。

おへその高さでCTを撮影すると、

内臓脂肪面積(VFA:visceral fat area)を測定できます。

しかし、健康診断を受ける全員にCTを撮影することは現実的ではありません。

 

そこで、

メジャー1本で簡単に内臓脂肪の蓄積を推測する方法

として腹囲測定が使われています。

「男性85cm・女性90cm」はどこから出てきた?

日本のメタボリックシンドローム診断基準では、

男性:腹囲85cm以上
女性:腹囲90cm以上

が内臓脂肪蓄積の目安とされています。

この数字が適当に決められたわけではありません。

日本では、

CTで測定した内臓脂肪面積100cm²以上

を内臓脂肪蓄積の基準とし、

それに相当する腹囲として男性85cm・女性90cmが設定されました。(*1、2)

つまり、

内臓脂肪面積100cm²
↓
健診で全員にCTはできない
↓
腹囲で推測する
↓
男性85cm・女性90cm

という考え方です。

腹囲測定は、いわば内臓脂肪を簡便に推測するためのスクリーニングなのです。

腹囲85cmを超えたら「メタボ」なの?

ここはよく誤解されます。

男性で腹囲85cmを超えただけでは、メタボリックシンドロームとは診断されません。

日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、

内臓脂肪蓄積に加えて、

  • 血圧高値

  • 血糖高値

  • 中性脂肪高値またはHDLコレステロール低値

のうち、2項目以上を満たすことでメタボリックシンドロームと診断します。(*1)

つまり重要なのは、お腹の大きさそのものではありません。

内臓脂肪が増えた結果、血圧・血糖・脂質にも異常が出始めていないか

を見ることが大切です。

内臓脂肪から始まる「メタボリックドミノ」

慶応義塾大学病院KOMPASより

内臓脂肪が増えると、インスリン抵抗性などの代謝異常につながります。

そして、

過食・運動不足など
↓
内臓脂肪の蓄積
↓
インスリン抵抗性
↓
高血糖・高血圧・脂質異常
↓
糖尿病・脂肪肝・CKD
↓
動脈硬化
↓
心筋梗塞・脳卒中

と、病気がドミノ倒しのように連鎖していくことがあります。

これが「メタボリックドミノ」という考え方です。(*3)

つまり腹囲測定は、

ドミノが大きく倒れる前に、上流で異変に気づくための簡単な検査

とも考えられます。

でも「女性90cm」って少し甘くない?

ここが日本の腹囲基準の興味深いところです。

日本の基準は、

男性85cm・女性90cm

ですが、腹囲の基準は世界共通ではありません。

IDF(国際糖尿病連合)では、

人種・民族によって異なる腹囲の基準が示されています。

例えば、南アジア人や中国人では、

男性90cm以上
女性80cm以上

が用いられています。(*4)

日本人についても、IDFでは従来の日本基準とは別に、

男性90cm・女性80cmという

Asian cut-offを用いることを支持するデータがあるとされています。(*4)

つまり、

「日本の基準で女性90cm未満だから安心」

とは言い切れません。

日本人女性は80cmくらいから注意?

実際、日本人を対象とした研究でも、

特に女性では

80cm前後を適切な腹囲の目安

とする報告があります。

Haraらの日本人を対象とした研究では、

代謝リスクを拾い上げる腹囲のカットオフとして、

男性85cm
女性80cm

が報告されています。(*5)

また久山町研究では、将来の心血管疾患を予測する腹囲として、

男性90cm
女性80cm

が示されました。(*6)

さらに、日本人約5万5千人を対象に糖尿病発症を検討した研究でも、

適切な腹囲のカットオフとして

男性85cm
女性80cm

が報告されています。(*7)

研究によって数字には多少の違いがありますが、

特に日本人女性では「90cm未満だから問題なし」

とは言い切れません

腹囲90㎝は国際的にも緩い基準です。

そもそも「男女とも内臓脂肪100cm²」でいいの?

さらに興味深い研究があります。

CTで内臓脂肪を実際に測定した日本人を対象とした研究では、

複数の代謝リスクを予測する内臓脂肪面積として、

男性:約100cm²
女性:約65cm²

が示され、それぞれ腹囲では約86cm、77cmに相当しました。(*8)

つまり、

「男女とも内臓脂肪100cm²を同じ基準にしてよいのか?」

という出発点そのものにも議論があります。

もちろん、現在の日本の正式な診断基準は男性85cm・女性90cmです。

しかし、

基準未満=生活習慣病のリスクがない

という意味ではありません。

BMIが正常なら腹囲は気にしなくていい?

これも注意が必要です。

BMIは身長と体重から計算するため、脂肪が「どこについているか」までは分かりません。

同じBMIでも、内臓脂肪の量には違いがあります。

そのため健康診断では、

BMI + 腹囲 + 血圧 + 血糖 + 脂質

を組み合わせて見ることが重要です。

健診で腹囲が大きいと言われたら?

腹囲だけで判断するのではなく、

  • 体重・BMI

  • 血圧

  • 血糖・HbA1c

  • 中性脂肪

  • HDLコレステロール

  • LDLコレステロール

  • 肝機能・脂肪肝

なども一緒に確認しましょう。

大切なのは、

「メタボリックドミノが動き始めていないか?」

という視点で健診結果全体を見ることです。

腹囲測定は「太っているか」を測る検査ではありません

健康診断でメジャーをお腹に巻くのには、ちゃんと意味があります。

腹囲測定の目的は、

見た目の肥満を評価することではなく、

その奥にある内臓脂肪と生活習慣病のリスクを見つけること

です。

日本の男性85cm・女性90cmという基準には、

CTで測定した内臓脂肪面積100cm²という背景があります。

一方、その後の研究では、

特に日本人女性について80cm前後から代謝異常に注意した方がよいことを示すデータもあります。

「まだ基準値を超えていないから大丈夫」ではなく、

腹囲が増えてきた段階で血圧・血糖・脂質なども一緒に確認する。

メタボリックドミノをできるだけ上流で止める。

それが健康診断で腹囲を測る大きな意味です。

参考文献

1)メタボリックシンドローム診断基準検討委員会.
メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌. 2005;94:794-809.
→ 日本の85cm/90cm、VFA 100cm²の原典。 厚労省資料でも「男女とも内臓脂肪面積≧100cm²に相当」と確認できます。(厚生労働省)

2)Japan Atherosclerosis Society.
Japan Atherosclerosis Society Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022. J Atheroscler Thromb. 2024;31.


3)Alberti KGMM, Zimmet P, Shaw J.
Metabolic syndrome—a new world-wide definition. A Consensus Statement from the International Diabetes Federation. Diabet Med. 2006;23:469-480.

4)Miyawaki T, Hirata M, Moriyama K, et al.
Metabolic syndrome in Japanese diagnosed with visceral fat measurement by computed tomography. Proc Jpn Acad Ser B. 2005;81:471-479.

5)Doi Y, Ninomiya T, Hata J, et al.
Proposed criteria for metabolic syndrome in Japanese based on prospective evidence: the Hisayama Study. Stroke. 2009;40:1187-1194.

6)Hu H, et al.
Optimal waist circumference cut-off points and ability of different metabolic syndrome criteria for predicting diabetes in Japanese men and women. BMC Public Health. 2016;16:220.

男女ともに腹囲85㎝超えたら要注意です。

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Q&A(よくあるご質問)

Q. 健康診断ではなぜ腹囲を測るのですか?
A. 見た目の肥満を判断するためではなく、生活習慣病と関連する内臓脂肪の蓄積を簡便に推測するためです。

Q. 男性の腹囲85cmにはどんな根拠がありますか?
A. 日本ではCTで測定した内臓脂肪面積100cm²以上を内臓脂肪蓄積の目安とし、それに相当する腹囲として男性85cmが設定されました。

Q. なぜ女性の腹囲基準は90cmなのですか?
A. 日本のメタボリックシンドローム診断基準では、男女とも内臓脂肪面積100cm²を基準とし、それに相当する腹囲として女性90cmが設定されました。

Q. 女性は腹囲90cm未満なら安心ですか?
A. いいえ。日本人女性では、代謝異常や将来の糖尿病・心血管疾患のリスクを予測する腹囲として80cm前後を示した研究もあります。90cm未満でも血糖・血圧・脂質などと合わせて評価することが大切です。

Q. 腹囲85cmを超えるとメタボですか?
A. 腹囲だけではメタボリックシンドロームとは診断されません。日本の基準では内臓脂肪蓄積に加えて、血糖・血圧・脂質の3項目のうち2項目以上を満たす必要があります。

Q. BMIが正常なら腹囲が大きくても問題ありませんか?
A. BMIだけでは脂肪がどこについているか分かりません。BMIが正常でも内臓脂肪が多い場合があるため、腹囲や血糖、血圧、脂質などを一緒に確認します。

Q. 内臓脂肪と糖尿病にはどんな関係がありますか?
A. 内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性と関連し、高血糖・高血圧・脂質異常などが重なっていく「メタボリックドミノ」の上流に位置します。

Q. 健診で腹囲が大きいと言われたら何を確認すればよいですか?
A. 腹囲だけでなく、体重・BMI、血圧、血糖・HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロール、肝機能や脂肪肝なども確認しましょう。

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