健診異常シリーズ⑬【脂肪肝】と言われたら放置していい?糖尿病専門医が解説!
健康診断や人間ドックで
脂肪肝がありますね
と言われたことはありませんか?
少し太っているからかな?
お酒を控えれば大丈夫?
肝機能の数値はそれほど高くないから、様子見でいいですよね?
と思ってしまう方も少なくありません。
しかし脂肪肝は、
メタボリックドミノの中流を担い
糖尿病や動脈硬化とも深く関係しており、
放置すると一部では肝硬変や肝がんへ進行することがあります。
今回は
脂肪肝(MASLD)について、
健診結果の見方から検査、治療まで糖尿病専門医が解説します。
脂肪肝(MASLD)とは?
脂肪肝とは、
肝臓に脂肪がたまり過ぎた状態です。
過剰な糖質や脂質の摂取は脂肪肝の原因となります
以前は
NAFLD(ナッフルディー:非アルコール性脂肪性肝疾患)
と呼ばれていました。
しかし2023年、
病気の原因をより分かりやすく表すため、
MASLD(マッスルディー:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)
へ名称が変更されました。
多くの脂肪肝の患者さんでは
-
肥満
-
内臓脂肪
-
インスリン抵抗性
-
糖尿病
-
高血圧
-
脂質異常症
などの代謝異常が背景にあります。
なぜ脂肪肝になるの?
脂肪肝の中心にあるのが
インスリン抵抗性です。
インスリンが効きにくくなると、
脂肪が肝臓へたまりやすくなります。
さらに脂肪肝になると、
今度は肝臓でもインスリンが効きにくくなり、
血糖値が上がりやすくなる悪循環に入ります。
つまり脂肪肝は、
糖尿病やメタボリックシンドロームとも深く関係しています。
健診でどこを見る?
脂肪肝が疑われる場合は
✅ ALT
✅ AST
✅ γ-GTP
を確認します。
ASTよりALTが高い(ALT優位)場合は、
脂肪肝の可能性が高まります。
また
-
HbA1c
-
血糖値
-
中性脂肪
-
HDLコレステロール
-
BMI
-
腹囲
なども重要です。
さらに
血小板が減少している場合は、
肝線維化が進んでいる可能性もあります。
脂肪肝はみんなが肝硬変になるの?
結論から言うと、
脂肪肝と診断されたすべての方が肝硬変になるわけではありません。
多くの方は、肝臓に脂肪がたまっているだけの状態で経過します。
しかし、一部の方では肝臓に炎症を伴う
MASH(マッシュ:代謝機能障害関連脂肪肝炎)(旧NASH:ナッシュ)
へ進行し、
肝臓に炎症が続くと、
傷が修復されるたびに
肝臓が硬くなり、
肝線維化が進行することがあります。
一般的には、脂肪肝(MASLD)の約20~30%がMASHへ進行すると考えられています。
さらに、MASHでは線維化が進行しやすく、
進行した線維化や肝硬変では肝臓がんのリスクも高くなることが報告されています。
つまり、
脂肪肝診療では、
「脂肪肝があるかどうか」
だけではなく、
「肝線維化が進んでいないか」を評価することが重要視されています。
では、線維化はどのように調べるのでしょうか。
以前は肝生検(肝臓の組織を採取する検査)が必要でしたが、
現在ではまず健康診断や採血結果を利用して線維化のリスクを評価します。
肝硬変の原因としてMASHは増えている
肝線維化が進行すると肝硬変となり、肝臓がん・肝不全などのリスクも高くなります。
肝硬変といえばB型肝炎・C型肝炎が中心でした。
しかし抗ウイルス治療の進歩により、ウイルス性肝炎による肝硬変は大きく減少しています。
一方で増えているのが
- アルコール性肝疾患(35.4%)
- MASH(旧NASH)(14.6%)
です。現在では生活習慣が関係する肝疾患が、肝硬変の半数以上を占めるようになっています。
どんな検査をする?
代表的な指標が、
FIB-4 index(フィブフォーインデックス)
です。
FIB-4 indexは、
- 年齢
- AST
- ALT
- 血小板数
という健康診断でも測定される項目から計算でき、肝線維化のリスクを簡単に評価することができます。
FIB-4 indexの国内エビデンス
大阪公立大学を中心とした研究グループでは、
約10万人の健診受診者を対象としたMIRACLE-J研究が行われています。
この研究では、
FIB-4 indexは脂肪肝(MASLD)の線維化リスク評価に有用であり、
日本人でも健診データから高リスク患者を効率よく抽出できることが報告されています。
また、日本消化器病学会・日本肝臓学会のMASLD診療ガイドラインでも、
FIB-4 indexを最初のスクリーニングとして使用し、
FIB-4 indexで線維化の可能性が高い場合は、腹部エコーや肝線維化マーカーなどの追加検査を行い、必要に応じて肝臓専門医へ紹介します。
当院の血液検査でもFIB-4 indexを測定することが可能です。
参考文献
Fujii H, et al. MIRACLE-J study. Hepatology Research. 2024.
他の病気が隠れていない?
肝機能異常がある場合は、
脂肪肝だけとは限りません。
必要に応じて
-
B型肝炎
-
C型肝炎
-
自己免疫性肝炎
-
原発性胆汁性胆管炎(PBC)
-
薬剤性肝障害
なども調べます。
脂肪肝は動脈硬化とも関係します
慶應義塾大学病院KOMPASより一部改編
以前紹介した
メタボリックドミノ
という考え方があります。
生活習慣病は
別々の病気ではなく、
一つ一つが積み重なり次の病気を引き起こします。
その中流にあるドミノが
脂肪肝です。
生活習慣・遺伝・体質
↓
肥満(内臓脂肪)
↓
インスリン抵抗性
↓
メタボリックシンドローム
(食後高血糖、高血圧、脂質異常)↓
脂肪肝
↓
糖尿病・慢性腎臓病(CKD)
↓
動脈硬化症
↓
心筋梗塞・脳卒中・糖尿病合併症・認知症 等
つまり、
肝臓だけをみるのではなく
生活習慣の改善や減量が予防につながります。
治療・予防
基本は
✅ 運動
✅ 食事改善
✅ 3〜5%の減量
です。
糖尿病や肥満症を合併する方では
GLP-1受容体作動薬
GIP/GLP-1受容体作動薬
SGLT2阻害薬
などが有効な場合もあります。
現在では、肝生検などでMASHと確定診断され、
適応を満たした患者さんでは、
GLP-1受容体作動薬であるウゴービ®(セマグルチド:GLP-1受容体作動薬)による保険診療という新たな治療選択肢も登場しました。
ただし、保険診療で処方できるのは、
最適使用推進ガイドラインで定められた施設要件・医師要件を満たす医療機関に限られます。
そのため、すべての医療機関で受けられる治療ではありません。
まとめ
脂肪肝(MASLD)は
単なる肝臓の病気ではありません。
糖尿病や動脈硬化にもつながる
生活習慣病のサインです。
健診で
-
ALTが高い
-
γ-GTPが高い
-
エコーで脂肪肝と言われた
という方は、
一度しっかり評価を受けることをおすすめします。
脂肪肝を指摘された方は背景に
肥満症、メタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸症候群などが隠れている可能性があります。
生活習慣病が進行する前に、お気軽に当院までご相談ください。
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【クリニック情報】
- クリニック名: 沼口内科江古田駅北口糖尿病クリニック
- 住所: 東京都練馬区小竹町1-36-5 1階 [アクセス]
- 最寄り駅: 西武池袋線「江古田駅」北口 徒歩約4分
- 院長: 沼口隆太郎(糖尿病専門医・認定内科医)
- 診療内容: 内科・糖尿病・生活習慣病・発熱・抗体検査(自費)/ワクチン(自費)・健康診断(自費)/診断書(自費)
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Q&A(よくあるご質問)
Q. 健康診断で脂肪肝と言われたら放置しても大丈夫ですか?
A. 多くの脂肪肝はすぐに肝硬変へ進行するわけではありません。しかし一部ではMASH(旧NASH)へ進行し、肝線維化や肝硬変、肝臓がんにつながることがあります。健診で脂肪肝を指摘された場合は、一度評価を受けることをおすすめします。
Q. 脂肪肝とMASLDは何が違いますか?
A. MASLDは2023年から使用されている新しい病名です。以前のNAFLDに代わる名称で、肥満や糖尿病、脂質異常症など代謝異常を背景とした脂肪肝を指します。
Q. FIB-4 indexとは何ですか?
A. FIB-4 indexは年齢、AST、ALT、血小板数から計算する指標です。採血結果だけで肝線維化のリスクを評価できるため、現在の脂肪肝診療で広く利用されています。
Q. 脂肪肝は糖尿病と関係がありますか?
A. はい。脂肪肝の背景にはインスリン抵抗性があり、糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化とも深く関係しています。
Q. 脂肪肝は治りますか?
A. 初期の脂肪肝は、体重を3〜5%減らすことや食事・運動の改善で良くなることがあります。糖尿病や肥満症を合併する場合は、薬物療法が有効なこともあります。
肝機能の数値やエコー所見、体重推移などで客観的に評価することが可能です。
