健診異常シリーズ⑫【HDLコレステロール(善玉)が低い】と言われたら|糖尿病専門医が解説!
健康診断で
HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低いですね
と言われたことはありませんか?
善玉が低いと何が悪いの?
LDL(悪玉)が正常なら問題ない?
薬やサプリメントで増やした方がいいの?
と疑問に思う方も多いでしょう。
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、血管を守る重要な働きをしています。
しかし近年では、
「HDLが低いこと」よりも、「なぜHDLが低くなっているのか」が重要
であることが分かってきました。
今回は、HDLコレステロールが低い意味や動脈硬化との関係、改善方法について糖尿病専門医がわかりやすく解説します。
HDL(善玉コレステロール)とは?
HDL(High Density Lipoprotein)は、血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ働きをしています。
そのため「善玉コレステロール」と呼ばれています。
血管の掃除屋さんのような役割を担い、動脈硬化を防ぐために重要な脂質です。
HDLが低い基準
健康診断では
HDLコレステロール40mg/dL未満
で「低HDLコレステロール血症」と診断されます。
また、この基準はメタボリックシンドロームの診断基準にも採用されています。HDLが低いと動脈硬化リスクは高くなる?
はい。
Framingham Heart Studyでは、
HDLコレステロールが高い人ほど冠動脈疾患(心筋梗塞など)の発症が少ない
ことが報告されました。
HDLはLDLコレステロールとは独立した心血管リスクの予測因子であり、HDLが低い人ほど動脈硬化性疾患を発症しやすいことが知られています。
引用文献
Gordon T, Castelli WP, Hjortland MC, et al.The Framingham Study.Am J Med. 1977
なぜHDLはメタボリックシンドロームの診断基準なの?
HDLが診断基準に採用された理由は、
HDLそのものを治療するためではありません。
HDLが低い人では
・内臓脂肪
・中性脂肪高値
・糖尿病
・高血圧
などを合併することが多く、
インスリン抵抗性を背景とした生活習慣病
が隠れていることが分かっていました。
そのため、
HDL低値は
「インスリン抵抗性のサイン」
としてメタボリックシンドロームの診断基準に採用されています。
※インスリン抵抗性とは
インスリン抵抗性とは、膵臓からインスリンが十分に分泌されていても、
体がその働きに反応しにくくなった状態をいいます。
通常、インスリンは血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓へ取り込み、血糖値を下げる働きをしています。
しかし、内臓脂肪が増えるなどの影響でインスリンが効きにくくなると、
血糖値を保つために膵臓はさらに多くのインスリンを分泌しなければなりません。
この状態が続くと、高インスリン血症や高血糖だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病も起こりやすくなります。
HDL低値とインスリン抵抗性
1988年、Reavenは「Syndrome X」を提唱し、
インスリン抵抗性が
・中性脂肪(TG)上昇
・HDL低下
・高血圧
・高血糖
を引き起こす共通の病態であると報告しました。
その後の研究では、
インスリン抵抗性になると
・中性脂肪(TG)↑
・HDL↓
・small dense LDL↑
という特徴的な脂質異常(アテローム性脂質異常症)が起こることが明らかになっています。
つまり、
HDLが低いことは、内臓脂肪やインスリン抵抗性が進んでいるサインとも考えられるのです。
引用文献
Reaven GM.Diabetes. 1988
Reaven GM.Physiol Rev. 1995
HDLを薬で上げれば安心なのでしょうか?
以前は
「HDLを薬で増やせば、心筋梗塞や脳梗塞も減る」
と期待されていました。
しかし、HDLを上昇させる薬であるナイアシンを用いた大規模臨床試験(AIM-HIGH試験、HPS2-THRIVE試験)では、
HDLコレステロールは上昇したものの、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントは減少しませんでした。
この結果から現在では、
HDLの数値だけを上げることを治療目標とする考え方は一般的ではありません。
HDLは
「増やす数値」ではなく、「体の代謝状態を映す数値」
として考えられています。
引用文献
AIM-HIGH Investigators.N Engl J Med. 2011
HPS2-THRIVE Collaborative Group.Lancet. 2014
HDLを改善するには?
HDLを改善するために最も重要なのは、
HDLだけを上げることではなく、インスリン抵抗性を改善することです。
そのためには
✔ 適度な運動
✔ 体重の3〜5%の減量
✔ 禁煙
✔ 青魚やナッツなど不飽和脂肪酸を含む食品を取り入れる
✔ 中性脂肪を改善する
ことが勧められます。
生活習慣を改善すると、
結果としてHDLも改善し、
他の動脈硬化危険因子も改善することが期待できるため
動脈硬化リスクの低下につながります。
健康診断でHDLが低いと言われたら
HDLだけではなく
✔ LDLコレステロール
✔ non-HDLコレステロール
✔ 中性脂肪
✔ HbA1c
✔ ALT(脂肪肝)
✔ 腹囲
も一緒に確認しましょう。
HDL低値は
メタボリックドミノの始まりを知らせるサイン
かもしれません。
まとめ
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれています。
しかし現在では、
HDLを薬で増やすことよりも、HDLが低くなる背景にあるインスリン抵抗性や内臓脂肪を
食事運動などの生活習慣で改善することが重要と考えられています。
健康診断でHDLが低いと言われたら、
「善玉が少ない」と考えるだけではなく、
体からの生活習慣改善のサインとして受け止め、
再検査や詳しい評価を受けることをおすすめします。
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- 住所: 東京都練馬区小竹町1-36-5 1階 [アクセス]
- 最寄り駅: 西武池袋線「江古田駅」北口 徒歩約4分
- 院長: 沼口隆太郎(糖尿病専門医・認定内科医)
- 診療内容: 内科・糖尿病・生活習慣病・発熱・抗体検査(自費)/ワクチン(自費)・健康診断(自費)/診断書(自費)
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Q&A(よくあるご質問)
Q. HDLコレステロール(善玉)が低いと何が問題ですか?
A. HDLが低い人は心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性疾患のリスクが高いことが知られています。また、内臓脂肪やインスリン抵抗性が隠れているサインでもあります。
Q. HDLコレステロールが低くなる原因は何ですか?
A. 内臓脂肪型肥満、運動不足、喫煙、糖尿病、中性脂肪高値などが代表的な原因です。これらはインスリン抵抗性と深く関係しています。
Q. HDLを上げる薬はありますか?
A. HDLを上昇させる薬はありますが、大規模臨床試験ではHDLだけの改善は心筋梗塞や脳梗塞を十分に減らすことは証明されませんでした。そのため現在はHDLだけを上げる治療は一般的ではありません。
Q. HDLコレステロールを改善するにはどうすればよいですか?
A. 適度な運動、体重の3〜5%減量、禁煙、青魚やナッツなど不飽和脂肪酸を含む食品の摂取、中性脂肪の改善が勧められます。
Q. HDLが低いと言われたら受診は必要ですか?
A. HDL低値はメタボリックシンドロームや糖尿病、脂肪肝などが隠れている可能性があります。LDLコレステロール、中性脂肪、HbA1c、肝機能なども含めて医療機関で評価を受けることをおすすめします。
