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高血圧はなぜ治療するの?脳卒中・腎臓病・糖尿病との意外な関係

[2026.06.09]

先日、高血圧診療に関する研究会で最新の知見について議論する機会がありました。

糖尿病専門医として日々診療していますが、高血圧診療について改めて学ぶことで、血圧管理の重要性を再認識しました。

今回はその内容も踏まえて、高血圧治療についてわかりやすく解説します。

糖尿病専門医が考える高血圧診療

健康診断で

   

血圧が高いですね

と言われても、

特に体調が悪いわけではないし、そのまま様子を見ている方は少なくありません。

実際、高血圧そのもので困る症状が出ることは多くありません。

しかし私が糖尿病専門医として診療していると、将来の脳卒中や腎不全、心不全のリスクを考える上で、血糖値と同じくらい血圧管理が重要だと感じています。

糖尿病患者さんの診療ではHbA1cに注目が集まりがちですが、血圧管理によって得られる恩恵は決して小さくありません。

高血圧治療の目的は血圧を下げることではない

血圧治療の本当の目的は、血圧計の数字を良くすることではありません。

大切なのは将来の

  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 慢性腎臓病
  • 網膜症
  • 認知症

などを予防することです。

血圧が高い状態が長期間続くと、全身の血管に負担がかかります。

高血圧治療は、その負担を減らし血管を守るための治療と言えます。

糖尿病患者さんでは血圧管理がさらに重要

糖尿病も高血圧も血管に負担をかける病気です。

両者が重なることで、

  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • 腎症
  • 網膜症

などのリスクはさらに高くなります。

そのため糖尿病診療では血糖値だけでなく、血圧や脂質異常症も含めて管理することが重要です。

J-DOIT3が示した早期介入の重要性

日本で行われた大規模研究J-DOIT3では、

 

糖尿病患者さんに対して

  • 血糖 HbA1c 8.0→6.8 %
  • 血圧 134/80→123/71 mmHg
  • 脂質 LDL-C 126→85 mg/dl

と早期からしっかり管理することで、

脳血管疾患の58%のリスク低下が認められました。

さらに、

  • 腎症 32%の低下
  • 網膜症 14%の低下

が示されています。

この研究では血圧134/80mmHgから123/71mmHgへしっかりと低下させ管理していました。

血糖値だけではなく、血圧管理によっても糖尿病合併症を予防できることを示した重要な研究です。

最近の研究で見えてきたこと

近年、メンデルランダム化解析と呼ばれる研究手法により、

生まれつき血圧が低くなりやすい遺伝的背景を持つ人では、糖尿病発症リスクも低い可能性が報告されています。

まだ解明途中の分野ではありますが、

血圧管理は脳卒中予防だけでなく、糖代謝にも良い影響を与える可能性があります。

今後の研究結果にも注目したいところです。

血圧目標は以前より厳しくなっている

以上、さまざまな研究結果をまとめ

高血圧ガイドライン2025では高齢者であっても、

  • 診察室血圧130/80mmHg未満
  • 家庭血圧125/75mmHg未満

を目指す考え方が広がっています。

近年は高齢者でも積極的に血圧を管理した方が脳卒中や心不全を予防できることがわかってきたことで目標値が下げられました。

しかし実際には、
理想の目標血圧を達成できていた患者さんは少ないとJ-DOME研究でも明らかです。

血圧管理の重要性は理解されていても、現実にはなかなか達成が難しいことが分かります。

日本人は減塩が特に重要

日本人は塩分感受性高血圧が多いことが知られています。

つまり、塩分摂取量の影響を受けやすい体質の方が少なくありません。

薬物療法も重要ですが、

  • 減塩

  • 適正体重の維持

  • 運動習慣

といった生活習慣の改善が治療の土台になります。

尿検査で推定塩分摂取量を測定することができます。

日本人の平均は何も気にせずに食事をすると1日男性は11g、女性は9.3gと世界でも塩分摂取量が多いです。(国民健康・栄養調査 平成30年)

厚生労働省の「日本人食事摂取基準(20年版)」では男性7.5g、女性6.5gを推奨し

高血圧治療中の方は1日6g未満を目標としています。(高血圧学会2019)

糖尿病患者さんの降圧薬選択

糖尿病患者さんでは、

ARBやACE阻害薬が選択されることが多く、血圧を下げるだけでなく腎保護効果も期待できます。

しかし塩分過剰ではARBやACE阻害薬が効きにくくなることがあります。

一方で、

サイアザイド系利尿薬やβ遮断薬は患者さんによって血糖値を悪化させる可能性もあるため、病態に応じた選択が必要です。

塩分過剰が続くだけで

・降圧薬の種類・量が増える

・ジェネリックのない薬価の高い最新の降圧薬に切り替え

・治療が進まないと合併症の進行

などの負の要因が増えます。

また、味を薄目に料理を作っていてもたくさん食べてしまうと

1日塩分摂取量は増えてしまします。

1日塩分摂取量を減らすことで

・血圧が下がる

・降圧薬の減量・中止の可能性

・将来の合併症の予防

につながる可能性があります。

まとめ

高血圧治療の目的は、血圧計の数字を良くすることではなく、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などを予防し健康寿命を延ばすことにあります。

糖尿病患者さんでは血糖値だけでなく、血圧や脂質も含めた総合的な管理が重要です。

HbA1cは毎日測れませんが、血圧は自宅で毎日測ることができます。

家庭血圧は将来の脳卒中や心不全リスクを予測する重要な指標です。

ぜひ家庭血圧測定と減塩を習慣にして、将来の健康につなげていきましょう。

江古田駅北口徒歩4分 沼口内科 江古田駅北口糖尿病クリニック

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Q&A

📌 よくあるご質問

Q. 高血圧治療の目的は何ですか?
A. 血圧計の数字を良くすることではなく、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全などの将来の合併症を予防することです。

Q. 糖尿病患者さんで血圧管理が重要なのはなぜですか?
A. 糖尿病と高血圧が重なると、脳卒中、心筋梗塞、腎症、網膜症などのリスクがさらに高くなるためです。

Q. J-DOIT3研究とは何ですか?
A. 糖尿病患者さんに対し、血糖・血圧・脂質を早期から厳格に管理することで脳血管疾患や腎症などのリスク低下を示した日本の大規模研究です。

Q. メンデルランダム化解析とは何ですか?
A. 生まれつきの遺伝子の違いを利用して、病気の原因と結果の関係を調べる研究手法です。

Q. 血圧を下げると血糖値にも良い影響がありますか?
A. 最近の研究では、血圧管理が糖尿病発症リスクや糖代謝に良い影響を与える可能性が示されています。

Q. 日本人は塩分の影響を受けやすいですか?
A. 日本人は塩分感受性高血圧が多く、塩分摂取量によって血圧が上昇しやすいことが知られています。

Q. 高血圧患者さんの塩分目標はどれくらいですか?
A. 高血圧治療中の方は1日6g未満が推奨されています。

Q. 塩分摂取量は調べられますか?
A. 尿検査から推定1日塩分摂取量を算出することが可能です。

Q. 糖尿病患者さんに使われる降圧薬は何ですか?
A. ARBやACE阻害薬が第一選択となることが多く、降圧作用に加えて腎保護効果も期待できます。

Q. 塩分を摂りすぎると降圧薬の効果は落ちますか?
A. はい。特にARBやACE阻害薬は塩分過剰の状態では十分な効果を発揮しにくくなることがあります。

Q. 減塩にはどんなメリットがありますか?
A. 血圧低下、降圧薬の減量や中止の可能性、脳卒中や腎不全などの合併症予防につながります。

Q. 家庭血圧測定は必要ですか?
A. はい。家庭血圧は診察室血圧より将来の脳卒中や心不全リスクを反映しやすく、毎日の健康管理に役立ちます。

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